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廃墟に花々を


by stanislowski
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精米やののっこちゃん

精米屋ののっこちゃんが亡くなった。
28年間施設に入所していた。
ひっそり家族葬だったのに、父には知らせが入ったそうだ。

のっこちゃんは我が家のご近所さん。
いつもばあちゃんと(のっこちゃんのお母さん)買い物に来てくれた。
ひとりで買い物に来るときはメモを握り締め小銭を持って。
ちゃんと用足ししなくちゃだから手に力が入ってぎゅうぎゅう。
だからメモはくしゃくしゃになっている。
レジ番を仰せつかった私も、「なぁに?」って、メモを開いて、
御用のものを袋に入れてバイバイする。

あるとき、ばあちゃんが先に天に行ってしまって、つぎにじいちゃんが。
兄弟たち家族はそれぞれの事情があって、のっこちゃんは施設に行く事になった。

のっこちゃんは知的発達障害者だった。

施設に入ってからも、口にする食べ物、野菜に果物にパンにお菓子、みな、
「たけちゃんがら買ってきたのがい?」、 (たけちゃんとは父の名)
「たけちゃんがい?」って
いつもいつも聞いていたと、父はお通夜で聞かされたそうだ。

のっこちゃんの行動範囲は狭かった。
いつもばあちゃんと腕組みしながらウチの店に買い物に来て牛乳を飲んだ。
家族もうちまでを最長と決めていたのかもしれない。
だから、ウチの店がお出掛けの場の最高の場所だったのかもしれない。

一度、しゃがんで道路端でおしっこしたのっこちゃんをそのままにしてしまった。
何で止めなかったのか?
精薄という言葉は使われなくなったが、わたしはのっこちゃんを差別というかいやだと思ったのだ。

わたしのいやらしさとは裏腹に、父の小さなお店をいつまでも最高の場所とし、
「たけちゃん、たけちゃん」って、
そんな思いをもって旅立ったのっこちゃんの魂の清らかさよ。

ようやく赦された思いがするのか?

涙が、鼻が痛いほど鼻水が流れて止まらない。

ありがとう。そして、ごめんね。
私の小さな父の店も時代に押されてしまったけど、まだ体の続く限り務めているよ。
by stanislowski | 2016-06-20 21:08 | ある日 | Comments(0)